壺齋散人の 美術批評 |
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タイユブールの戦い:ドラクロアの世界 |
タイユブールの戦いとは、1242年7月に、英仏戦争の一環として行われた戦闘である。この戦闘で、ルイ九世率いるフランス軍が、ヘンリー三世率いるイギリス軍に勝利した。「タイユブールの戦い(La bataille de Taillebourg)」と題するこの絵は、その勝利を記念する形で描かれたものである。 この絵は、フランス王ルイ・フィリップの注文に応じて制作された。ルイ・フィリップは、ヴェルサイユ宮殿内に歴史博物館を作り、そこにフランスの軍事的勝利を記念する歴史画を飾ることを目的として、1834年から翌年にかけて、多くの画家たちに制作を命じた。ドラクロアには、タイユブールの戦いでの勝利を割りあてたのだった。 戦いの場面は、7月21日の、シャラント川にかかるタイユブール橋での攻防の様子を描く。中央に馬に乗って橋を突破したルイ九世の凛々しい姿が描かれ、その周囲にフランス兵やイギリス兵がもつれあって戦う姿が描かれている。その描写は極めて迫真的である。 ルーベンスの神話画「アマゾンの戦い」の影響が指摘されている。やはり川に架かった橋の上での戦いを描いており、構図的には多少の類似性が指摘できる。だがそれもヒントにした程度で、仕上がりはかなり異なった印象を与える。 背景を暗くしていることで、光のあたった人物が浮き上がって見える。色彩は暖色主体でかなり豊穣さを感じさせる。なお、この作品は、今もヴェルサイユ宮殿の壁を飾っている。 (1837年 カンバスに油彩 485×555cm ヴェルサイユ宮殿) |
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