壺齋散人の 美術批評 |
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ハムレットと二人の墓堀人夫:ドラクロアの世界 |
ドラクロアは、文学作品にインスピレショーンを得た作品を多く描いた。なかでもダンテとシェイクスピアが好きだった。出世作の「ダンテの小船」は、いうまでもなく「神曲」の一節から取材したものだし、「怒れるメデア」はエウリピデスの戯曲に着想を得た。「ハムレットと二人の墓堀人夫(Hamlet et deux fossoyeurs)」と題するこの絵は、シェイクスピアの戯曲「ハムレット」から、有名な場面をイメージ化したものである。 ハムレットが友人のホレーショとともに、墓堀の現場をとおりがったシーンだ。二人の墓堀人夫は、鼻歌を歌いながら墓を掘り、穴の中から出てきた骸骨を差し上げながら、人間の運命のはかなさと、死は誰をも平等に訪れるという真理について語る。 絵はその劇的なイメージを視覚化したものだ。二人の墓堀人夫のうち一人が、墓の中から掘り当てた骸骨を手に持って、通りがかったハムレットらに示している。前を歩いているのがハムレットで、かれは目の前に差し出された骸骨をじっと見ている。興味をそそられた様子が、リアルにせまってくる。 この作品は、1839年のサロンに出展され、大きな反響を呼んだ。色彩による心理描写が絶賛されたのだったが、人の心理はたしかに、色であらわすのに向いているかもしれない。 (1839年 カンバスに油彩 81.5×65.4cm パリ、ルーヴル美術館) |
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