壺齋散人の 美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板


マルフィーザ:ドラクロアの世界




「マルフィーザ(Marphise)」と題したこの絵は、イタリア・ルネサンス期の詩人アリオストの長編詩「狂乱のオルランド」に取材した作品。この長編詩は、十字軍とサラセン軍との戦いをテーマにしたもので、そこに狂乱したオルランドがからむ。オルランドが狂乱したのは失恋のせいで、その失恋をテーマにした「恋するオルランド」という詩もボイアルドによって書かれていた。「狂乱のオルランド」はその続編という体裁になっている。

この絵は、長編詩のうちの、第二十歌に取材している。女性戦士マルフィーザの物語である。マルフィーザは、ガブリーナという老女を伴って旅する途中、妾を伴った騎士ピナペルロと戦い、これを打ち負かした。そこでマルフィーザは妾の着ている物を取り上げ、それをガブリーナに与えた。その光景を再現したものが、この絵の構図である。

馬に乗っているのがマルフィーザ(前)とガブリーナ。手前の若い女が妾である。その妾が着ている物を脱いで、馬上のマルフィーザに差し出そうとしているところである。

ドラクロアは、日記のなかでマルフィーザを「尊大な女」と呼んでいる。たしかに馬上の女の表情や振舞いには尊大さが感じられる。

(1852年 カンバスに油彩 82×101cm ボルティモア、ウォルターズ・アート・ギャラリー)




HOME ドラクロア次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである