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オフェリアの死:ドラクロアの世界




ドラクロアはシェイクスピアを深く愛していて、「ハムレット」や「ロメオとジュリエット」などに取材した作品を多く手がけている。「オフェリアの死(La mort d'Ophélie)」と題したこの作品もその一つ。「ハムレット」第三幕第七場の有名なシーンをモチーフにしている。

川に身を投げたオフェリアは、歌を歌いながら流されていく。この絵からは、オフェリアが歌っている様子は伝わってこず、そのかわりにオフェリアは頭上の木の枝に手を延ばしている。水に流されていることが苦しくなったのだろうか。

オフェリアの死の場面は、芸術家たちのインスピレーションを刺激するらしく、多くの画家がモチーフとしてとりあげたほか、詩にも歌われた。あのアルチュール・ランボーもオフェリアの死を悲しそうに歌っている。

ドラクロアは、このモチーフを何度となく取り上げた。一番早いものでは、1838年のものがある。色数を抑えたモノクローム調の作品だ。1843年にはリトグラフを制作。またそれを油彩に移した作品も作っている。上の絵は、1853年に制作され、それ以前の諸作品の総合的な成果という位置づけである。

(1853年 カンバスに油彩 23×30.5cm パリ、ルーヴル美術館)





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