壺齋散人の 美術批評 |
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神の子の誕生(TE TAMARI NO ATUA):ゴーギャン、タヒチの夢 |
タヒチに戻ってきたゴーギャンは、テウラから見放されてしまったので、別の愛人を作った。バフラという名の女性で、当時の年齢とか詳しいことはわからない。この女性が、島に戻った翌年の1896年に子を出産したのだが、その子はすぐに死んでしまった。ゴーギャンは、この女性をマリアに、死んだ子をキリストに見立てて、この絵を描いたと言われる。 手前のベッドの上では、産褥のマリアが横たわっている。その彼女から子を受け取って抱いているのは死霊のツパパウだ。ツパパウは、テウラをモデルにした「死霊が見ている」でも出てきたが、その際には眼に見える悪行はしなかった。この絵の中では、産褥の母親から生まれたばかりの子を取り上げて、死の国へ連れ去ろうとしている。 ベッドのある部屋の向こう側は、動物の納屋になっており、牛が不安そうにこちら側を見ている。動物にも人間界の異変がわかったのだろう。 ツパパウの背後にいる人物は、出産が無事にすんだなら、祝福するつもりでやって来たのだろう。これは「マリア賛歌」のなかの、聖母子を祝福する人々のパロディかもしれぬ。 これは、マリアとツパパウの表情を拡大したもの。マリアはぐったりとして、嘆き悲しむ気力もないといった風情だ。一方ツパパウのほうは、自分の任務を淡々とこなしているといった風情が伝わってくる。(1896年 カンヴァスに油彩 96×128cm ミュンヘン ノイエ・ピナコテーク) |
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