壺齋散人の 美術批評
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変りはないの(Parau Api):ゴーギャン、タヒチの夢





「浜辺のタヒチの女たち」と非常に良く似た構図の絵だが、微妙に違うところもある。二人の女のうち左側は、ポーズも服装も全く同じといってよいが、右側は腕と脚を露出させ、タヒチ風と思われる衣装を身につけており、ポーズも違っている。ただ表情はよく似ている。もっともこちらの方が、ピリッとした表情に見える。

「浜辺」のほうには91年製作の記載があり、こちらには92年とあるから、二つの作品には一年ほどの間隔があるわけだが、ゴーギャンがなぜ、このようなバージョンを描く気になったか、事情はわからない。

この絵のなかで女たちがいるところは、浜辺というよりも、屋内の感じがする。画面右手には、柱のようなものがあるが、これは「浜辺」には出てこない。また、なかほどの上部に花が見えているが、これも庭に咲く花のように見える。



これは、右手の女の部分を拡大したもの。目つきがするどいのと、姿勢に緊張感が漂って見えるところが、「浜辺」のなかの女と違った点だ。この女性には毅然としたところが感じられるのだが、そのことについてゴーギャンは「ノアノア」のなかで次のように書いている。

「私は、彼女たち、すくなくとも男と住んでいない女たちの前に来ると、ほんとうにおずおずとしてしまうのだった。それほどにも彼女たちは私やほかの男たちを素直に、威厳をもって、毅然として見つめるのだ」(岩切正一郎訳)

(カンヴァスに油彩 67×91cm ドレスデン 国立絵画館)





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