壺齋散人の 美術批評
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市場にて(Ta Matete):ゴーギャン、タヒチの夢





「市場にて(Ta Matete)」と題したこの絵は、パペーテの市場の様子を描いたものだ。南洋の島の市場にかかわらず、果物や魚などを売る様子は描かれていない。描かれているのは、派手に着飾った女たちだが、実はこれも売り物なのだ。女たちは着飾って媚びを売るような表情を見せ、自分の体をフランス人に売り込んでいるのである。

女たちの衣装やふるまい方にはエジプト美術の影響があると指摘されている。ゴーギャンのエジプト好きはよく知られているが、この絵にも、エジプト美術の影響が色濃く見られる。なぜゴーギャンが、タヒチの女たちを描くのにエジプト風をもちこんだのか、よくはわからない。ただのエキゾティック趣味だとする見方もある。

ゴーギャンは、タヒチの女に対して、ある種の敬意を持っていたが、彼女らを買うことには躊躇を感じたようだ。「ノアノア」のなかでも、女を世話されてことわる場面が書かれているが、その理由と言うのが、タヒチの女には病気持ちが多いということだった。

それにしても、ベンチに横に並んだ女たちの様子が、いかにも売り物の陳列のように見える。それぞれ手でしなを作っているが、これは性的な誘惑をこめたタヒチ流の身体メッセージなのだろう。



これは女たちの一部を拡大したもの。それぞれ原色の衣装を身につけ、思い思いのポーズをとっている。中には隣の女に話しかけているものもいるが、これは退屈を紛らせようというのか。(カンヴァスに油彩 73×91.5cm バーゼル美術館)





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