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テハマナの先祖たち(Merahi metua no Tehamana):ゴーギャン、タヒチの夢





ゴーギャンは、第一次タヒチ滞在中に、現地人の少女を妻にした。テウラという名の十三歳の少女で、ゴーギャンは偶然彼女と出会い、一目見て妻にすることを決心したのだった。「ノアノア」には、その折の様子が次のように記されている。

ある日ゴーギャンは、島のなかを冒険することとした。冒険と言っても、大して大きな島ではないので、島の周囲の海岸線沿いに歩くだけのことだったが、そうして歩いているところ、現地の人に食事をふるまわれ、とある中年女と会話をした。その中年女がゴーギャンに旅の目的を尋ねたので、ゴーギャンは「女を探しに」と答えたのだったが、するとその中年女は、自分の娘をくれてやろうと申し出たのだった。

意外な成り行きだったが、その娘を見て気に入ったゴーギャンはいくつか質問して、娘がそれに的確に答えたことに満足して、妻にすることに決めた。その質問の中には、梅毒にかかっていないことをたしかめる問いもあった。十三歳の少女に対してである。

ゴーギャンがこの娘を妻にしたのは、性的なはけ口を求める気持のほかに、絵のモデルにしようという魂胆も働いていたに違いないが、「ノアノア」の中では、そういうもくろみには一切触れていない。

着飾ったテウラ(テハマナ)が、装飾を施した壁の前でポーズを取っている。装飾のなかの人物たちは、テハマナの先祖たちをかたどったもので、マオリ人の祖先信仰を物語っている。



これは、テウラの顔の部分を拡大したもの。この絵を描いたのは、1893年にタヒチを去る直前のことで、テウラは15歳になっていた。15歳にしては大人びた表情だ。(カンヴァスに油彩 76.3×54.3cm シカゴ美術館)





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