壺齋散人の 美術批評 |
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その名はヴァイラウマティ(Vairaumati tei oa)
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ヴァイラウマティ(Vairaumati tei oa)とは、タヒチのマオリ族に伝わる神話の中の女神の名である。これをゴーギャンがイメージして描いたのがこの絵である。 ゴーギャンが「ノアノア」に記したその神話の概要は次のとおりである。偉大な神タッアロアにはオロという息子がいたが、彼は自分に相応しい女を求め、姉妹とともに島々を捜し歩いた。ボラボラ島のヴァイタペに差し掛かったところ、アヴァイ=アイアという湖で一人の女が沐浴しているのを見た。その美しさに心を引かれたオロは、姉妹たちに、自分の気持を彼女に伝えて欲しいといって、自分は物陰にかくれ様子を伺った。姉妹たちが娘に事情を話すと、娘が同意したので、オロが直接娘と会い、二人は結ばれた。 オロは毎日、この島と天上との間を、虹の橋をわたって往復した。そのうちヴァイラウマティは子を身ごもった。しかしオロはそろそろ天上に帰って、神としての自分の役割を果たさねばならなかった。こうして二人は別れ別れになってしまったが、ヴァイラウマティの生んだ子ホア・タプ・テ・ライは偉大な酋長になって母を喜ばせ、死後には天上に上げられ神となった。そして母のヴァイラウマティも女神に列せられた。 この絵は、ヴァイラウマティが沐浴しているところを描いたものだろう。背景に二体の像が見えるが、これはオロの二人の姉妹だと思われる。そのオロはヴァイラウマティの背後に立っている。 泉の水が描かれていないかわりに、姉妹たちから沸き出たと思われる水がヴァイラウマティに注いでいる。 これはヴァイラウマティの部分を拡大したもの。遠くにある像は二人の女神で、その腕らしきところから水が流れ出ているが、遠近感を含めて現実のイメージとはかなりかけ離れている。(1892年 カンヴァスに油彩 91×68cm モスクワ プーシュキン美術館) |
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