壺齋散人の 美術批評
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なぜ怒っているの(No te aha oe riri):ゴーギャン、タヒチの夢





ゴーギャンは1893年の8月にフランスに帰ったが、二年もたたないうちにフランスがいやになり、またタヒチに舞い戻った。1895年の9月のことである。今度は二度とヨーロッパの土を踏まない決心だった。

タヒチに戻ったゴーギャンは、病気の巣窟のような身になっていた。入退院を繰り返す。特に皮膚病がひどかった。それを現地の人はらい病と勘違いしてゴーギャンを避けた。ゴーギャンはもう一度テウラと暮らしたいと思ったのだが、彼女はゴーギャンがらい病だと思い込んで近づかなかった。ゴーギャンの絶望は深い。

年があけて1896年になると、体調もやや回復し、創作意欲も出てきた。「なぜ怒っているの(No te aha oe riri)」と題したこの絵は、そんな折に手がけたものである。

現地人の小屋の前で、女たちが思い思いに作業をしている。そのうちの一人が立ったまま、しゃがみこんだ女たちを見下ろしているが、この女がなにかを怒っているのだろうか。彼女の視線の先にある二人の女は、彼女を全く無視しているようである。土の赤と草の緑を補色対比させているが、全体としては暖色がかっている。



これは、作業する女たちの部分を拡大したもの。二羽の鶏が餌をあさる足元で、白いひよこたちが動き回っている。茶色のヒナもいるが、これは鶏ではなく、チャボかなんかだろうか。(1896年 カンヴァスに油彩 95.3×130.5cm シカゴ美術院)





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