壺齋散人の 美術批評
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黄色い家:アルルのゴッホ





1888年の2月にゴッホは南仏の町アルルにやってきて、ラマルティーヌ広場の一角にある黄色い家に住んだ。アルルは産業の町として結構にぎわっていたが、ラマルティーヌ広場は町の外れ近くにあって、そこからは麦畑まで歩いていけた。ゴッホは早速麦畑に出かけて行っては、強烈な太陽の光を浴びながら南国の明るい風景をスケッチした。

これはラマルティーヌ広場と、ゴッホの住んでいたアパートを描いたものだ。どの建物がゴッホの住んでいたアパートなのか、よくはわからないが、いずれにせよどの建物も質素だ。

空が濃いブルーで描かれており、どこにも影が見られないので、夜の風景かと思えばそうでもないらしい。人物がかなりくっきりと描かれているからだ。

では曇天の景色なのかと思えば、建物も人物もみな青天下にあるかのように明るく描かれている。しかも建物は空の暗いブルーを背景に浮かび上がって見える。

構図的には一応遠近法を意識しているように見えるが、その割には消失点がバラバラで安定した感じを与えない。不思議な空間感覚を覚えさせる絵だ。

(1988年9月 カンバスに油彩 72.1×91.5㎝ アムステルダム、国立ゴッホ美術館)





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