壺齋散人の 美術批評
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収穫:炎の画家ゴッホ





ゴッホがアルルでまず取りかかったのは自然をテーマにした連作だった。アルルに来て早々、はね橋を描く傍ら、「春」と題した果樹園の連作を描いた。そして六月になって麦の取入れが始まると、麦の収穫をテーマにした連作を手がけた。「収穫」と題したこの作品はその一枚である。

アルル近郊のラ・クロという地域での田園風景を描いている。手前と奥に麦畑が広がり、それに挟まれた形で、柵の向こう側に野菜畑が広がっている。画面左手にうず高く積み上げられた麦わらがいままさに収穫の盛りであることを物語っている。

麦わらの彼方では男が取入れの作業をし、その右手には馬車がのんびりと歩む。そして手前の柵の向こう側では農夫が野菜の取入れを行っていると言う具合に、人物を介して視線を誘導するように工夫されている。

上部の狭い空の描き方に始まり、横の線が連続する画面構成になっている。こういう構成はともすれば単調感を醸し出すのだが、この絵の場合には、色彩を効果的に配置することで単調感を破っている。

ゴッホはこの絵に強い思い入れを抱いていたようで、事前に繰り返しデッサンしているほか、完成後にも別のカンバスに描きなおしたりしている。

(1988年6月 カンバスに油彩 72.5×92㎝ アムステルダム、国立ゴッホ美術館)





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