壺齋散人の 美術批評
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夜のカフェ:炎の画家ゴッホ





これは夜のカフェの内部を描いたもの。正面の時計から、夜中の十二時を過ぎていることがわかる。こんな夜中に、幾組かの客がテーブルに腰かけて、ひそひそ話をしたり、眠りこんだりしている。独り玉突き台の脇に立っている男だけが、元気そうに見える。

この絵を手掛けていた頃、ゴッホは昼間に寝て夜中に目覚めているという生活を数日間続けたことが、手紙からわかる。その手紙の中でゴッホは、赤と緑で人間の情念を表現したいと語っている。

その言葉通りこの絵は、赤と緑の二色を、さまざまなバリエーションで使って、補色の効果を最大限引き出している。床の黄色の部分には、緑と赤とを交え、色の調和を演出しているが、全体的にはその調和を破るような強烈なコントラスト感があるために、この絵からはダイナミックな動きが伝わってくる。

電灯の周りに黄色い渦模様で光を表しているのは、晩年のゴッホの特徴となった筆使いの現れである。

(1888年9月 カンバスに油彩 70×89㎝ ニューヘヴン イェール大学アートギャラリー)




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