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ゴーギャンの椅子:炎の画家ゴッホ |
「ゴーギャンの椅子」と題されたこの絵は、「フィンセントの椅子」と一対をなす作品である。ゴッホがゴーギャンを黄色い家に招き入れたのは1888年10月のこと。それからしばらく経ってからゴッホは、自分とゴーギャンとの共同生活を記念して、この一対の椅子の絵を描いた。 色々な点で対照性を指摘できる。自分の椅子は昼間の明るい光の中で描かれているのに対し、ゴッホの椅子は夜のランプの光を浴びながら描かれていること、自分の椅子の上には愛用のパイプが、ゴッホの椅子には火をともした蝋燭とゴッホ愛読の小説が置かれていること、また椅子の形には無骨な実用性を感じさせるゴッホのものと、優雅な曲線を感じさせるゴーギャンのものといった対称性が、とりあえず指摘できる。 色彩的には自分の場合よりも、ゴッホのこの絵の方が込み入っている。とくに床をゴテゴテと描いているのは、壁との対象においても異様さを感じさせるし、椅子の木組みの描き方も執念深さを感じさせる。 この椅子が果たして黄色い家のアパートのなかにあったものなのか、それとも外から運びこんだものなのか、確実なことはわからない。ゴッホ自身がこの直前に描いた黄色い家の彼の部屋の中には、この形の椅子は見えない。 二人の共同生活は長続きせず、例のゴッホによる自分の耳切り事件を経て、ゴーギャンは12月23日にゴッホのもとを去った。 (1988年12月 カンバスに油彩 91×72㎝ アムステルダム、ゴッホ美術館) |
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