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ジョゼフ・ルーラン:炎の画家ゴッホ





ジョゼフ・ルーランはアルルの郵便局で郵便配達をしていた人である。無類の手紙好きであるゴッホは、頻繁に郵便局に通ううちに、この人と仲良くなった。この人と仲良くなると、その家族とも仲良くなった。この人には妻と三人の子どもたちがいたが、ゴッホはかれらの肖像画を併せて二十点も描いたのである。

この絵の中のジョゼフ・ルーランは、ルーラン家の主人らしく威厳のある姿で描かれている。郵便局の制服を着て、ポストという刺繍がある帽子を被り、眼を大きく見開いて、まっすぐこちらを向いている。威風堂々とした雰囲気が伝わってくる。

背後の花模様は、賑やかな髭と釣り合いをとるためにゴッホが特別に加えたのだとも、こういう模様の壁紙を背景にしたのだとも解釈される。実際ジョゼフの髭は、花も顔負けするほど装飾的だ。

色彩は、鮮やかなグリーンをバックにして、制服と帽子には鮮やかなブルーを使い、これら二種類の寒色から浮き上がるように、顔を暖色で描いている。一見単純そうに見えて、ゴッホの色彩への気配りは、かなりきめ細かい。

(1889年1月頃 カンバスに油彩 65×54㎝ オッテルロー、国立クレラー・ミュラー美術館)




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