壺齋散人の 美術批評
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星月夜:炎の画家ゴッホ





ゴッホは、その異常な言動から周囲の人々に気味悪がられ、1889年の3月に監禁を強いられたあと、5月8日にはサン・レミの精神病院に送りこまれた。この絵は、その病院の窓から見えた風景を描いたもので、ゴッホの作品の中で最も有名になったものの一つだ。

弟テオに宛てた手紙の中でゴッホは、「今朝、太陽が昇る前に私は長い間、窓から非常に大きなモーニングスター以外は何もない村里を見た」と書いている。おそらくゴッホは一晩中星空を眺めながら、この絵を描いたのだと思われる。

それにしても、この星空の描き方はすさまじい。それぞれの星は、まるで明るい鬼火のように光り輝き、また画面の中央には、星の巨大な渦がぶつかりあって、爆発的な動きを巻き起こしている。右上に見える光の玉は、月であろう。

輝く星空の下には、寝静まった町が横たわっている。いつくかの窓からは光が漏れているが、星の爆発的な明るさにくらべれば、静かなやすらぎを感じさせる。左手の糸杉も、動きよりも静かさを暗示している。

ゴッホはこの絵で、星空の動と人里の静を対比させようとつとめているように見える。

(1889年6月 カンバスに油彩 73×92㎝ ニューヨーク、近代美術館)





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