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花咲く巴旦杏の枝:炎の画家ゴッホ





1889年の2月に、弟のテオとその妻ヨハンナの間に男の子が生まれた。ゴッホはそのお祝いにこの絵を描いた。古い枝から新しい命である花が開いた様を、子どもの誕生になぞらえたつもりだったようである。

縦横に伸び広がった枝いっぱいに、巴旦杏の花が咲いている。ゴッホはその花を下から見上げるようにして描いた、というふうに伝わってくる。

しかし、この絵をよく見ると、巴旦杏というより、桜の花を思わせる。考証家の中には、これは巴旦杏の実写ではなく、桜の花の写真をもとにして描いたのだと主張するものもいる。

日本びいきのゴッホのことであるから、桜の写真も持っていたかもしれない。

そういう考証をわきにおいても、この絵には広重の浮世絵を思わせるようなところがある。

(1889年6月 カンバスに油彩 73×92㎝ アムステルダム、ゴッホ美術館)





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