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アイリスの花瓶:炎の画家ゴッホ





ゴッホはサン・レミ時代に多くの静物画を手掛けたが、これはその最も有名な一点。サン・レミを去る直前に描いたものだ。

構図は非常にシンプルで、黄色い無地のバックに、紫色のアイリスの花を強調して描いている。これは補色によるコントラストを応用したもので、アイリスが際立って鮮やかに見える。

アイリスの花の描き方も、色の彩度や明度の違いを十分に活用して、花が立体的に見えるように工夫されている。視線から遠い部分や中心から外れた部分は低い彩度で描く一方、視線の中心は彩度の高い色で、しかも明暗のコントラストを十分に強調している。

そうしたところに、ゴッホの理論的な側面を感じ取れる一点である。

(1890年5月 カンバスに油彩 92×73.5㎝ アムステルダム、国立ゴッホ美術館)




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