壺齋散人の 美術批評
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ゴッホの自画像1




「イーゼルに立つフェルト帽をかぶった自画像(Self-Portrait with Dark Felt Hat at the Easel)」と題するこの自画像は、パリに出て来た直後、1886年の4月ごろに描かれたものである。ゴッホが本格的に描いた初めての自画像である。

この頃のゴッホは、まだ印象派などの絵画に接しておらず、技法的にもオランダ絵画の伝統に縛られていた。オランダ絵画は、コントラストを重視したが、色彩にはあまり関心を払わなかった。そうしたところがこの絵にも顕著に出ている。

全体に暗い色彩で描かれ、明暗対比によってモチーフが浮かび出てくるように工夫されている。ゴッホはイーゼルの前に立ってこちらを、ということは鏡に映った自分自身を見ているわけだが、視線をはじめとして、表情の動きは強くは感じられない。絵を描くというささやかな動作とはいえ、画面からは、運動ではなく、静かな雰囲気が伝わってくる。

(1886年春、キャンバスに油彩、46.5×38.5cm、アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館)





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