壺齋散人の 美術批評
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黒いフェルト帽の自画像:ゴッホの自画像2




「黒いフェルト帽の自画像(Self-Portrait with Dark Felt Hat)」と題するこの絵も、パリにやってきた直後の1886年春に描かれたものである。前作同様明暗対比を強調しているが、画面はこちらのほうが明るい。特に顔が明るく目立つように描かれており、したがって顔の表情が一層よくわかるようになっている。

大まかな印象として、頭部の輪郭が背景から浮かび上がるように工夫されているが、よくあるように、暗い背景に明るいモチーフを対比させるだけで満足していない。当初は、背景を暗く描いたようだが、後にそこをナイフで削りとって、明るく描きなおした痕跡が伺える。恐らくゴッホは、背景の一部を明るくすることで、ありきたりの明暗対比ではなく、微妙な明暗対比を演出しようとしたのだろう。

この絵の中のゴッホの表情は、前作のそれに比べ、一段と生き生きしている。

(1886年春、キャンバスに油彩、41.5×32.5cm、アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館)





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