壺齋散人の 美術批評
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自画像:ゴッホの自画像4




この作品の制作時期は1886年の秋だろうと考えられている。主な理由は、オランダ時代の色遣いがまだ残っていることだ。この年の春に描いた自画像に比べれば色調は明るくなっているが、かといって印象派の影響はまだ見られない。というわけで、ゴッホの技法の発展段階からして、1886年の秋だろうと推測されるわけである。

ほぼ同時期に描かれた前作に比較すると、その違いは明瞭である。おそらく、前作を描いてからしばらく時間をおいてこの絵を描いたのだろうと思われる。前作の絵の中のゴッホに比べると、髪はいっそう薄く、髭の形もかなり違う。

この絵は、ゴッホの妹が1910年に刊行したメモワール「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの個人的な思い出」の口絵として使われた。ゴッホの自画像に特徴的な、あの訴えかけてくるようなまなざしが、この絵の中では非常にストレートに表現されていることから、彼女はこれをゴッホのプロフィールとして相応しいと判断したのだろう。

(1886年秋、キャンバスに油彩、39.5×29.5cm、ハーグ、ゲメーエンテ美術館)





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