壺齋散人の 美術批評
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パイプを咥え耳に包帯をした自画像:ゴッホの自画像20




ゴッホは、1889年の12月23日に、ゴーギャンと激論した末に自分の左耳を切り落とすという事件を引き起こした。これは、ゴッホが精神疾患にかかっていたからだとも、また、ゴーギャンの自己中心的な振舞いがゴッホの神経を刺激したからだともいわれているが、このためにゴーギャンはゴッホのもとを去り、ゴッホ自身は精神病院に入院することとなった。

「パイプを咥え耳に包帯をした自画像(Self-Portrait with Bandaged Ear and Pipe)」と題するこの絵は、翌年の1月、退院した直後に描かれた。ゴッホは自分のためにいろいろと骨を折ってくれたジヌー夫妻のためにこれを描いた。彼が自画像を描く時は、自分自身のためか、あるいは親しい友人に送る目的からで、いづれにせよ、そうした絵にはある種のぞんざいさが感じられるのであるが、この絵は非常に丁寧に描かれている。ジヌー夫妻に対するゴッホの気遣いが伺われるとする見方もある。

この絵は、1901年にパリのベルナン・ジューヌ画廊で開かれたゴッホの初めての回顧展に、他の70点の作品と共に飾られた。この回顧展は若い画家たちに大きな反響を呼び起こしたと言われる。そんなこともあって、ゴッホの自画像の中では、最初に有名になった作品である。

(1989年1月、キャンバスに油彩、51.0×45.0cm、シカゴ、個人蔵)





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