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聖顔:ロシア正教のイコン




聖母像とともにロシア正教の初期のイコンに多く描かれたのはキリストの顔「聖顔」である。それにはわけがある。イコンは常に偶像崇拝の嫌疑をかけられる傾向があったが、聖顔については、その嫌疑をかなり和らげられると信じられていたのである。

聖書外伝に、キリストがエデッサ王アブガルの求めに応じて、自分の顔を布に刻印したという話がある。この話はかなり流布していて、イコンに聖顔を描くことを後押しした。人々はイコンに描かれた聖顔を、人の手によってではなく、キリストの意思によって刻まれたものであると主張することで、偶像崇拝の嫌疑を逃れようとしたのである。

この聖顔のイコンは、13世紀頃のものだとされている。数多くの聖顔の中でも、表情が穏やかであるのが特徴だ。キリストの聖顔は、髭を伸ばし、両側の髪を長く垂らしているのが特徴である。(モスクワ、アンドレイ・ルブリョフ美術館)




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