壺齋散人の美術批評 |
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メキシコとUSAの国境に立つ自画像 フリーダ・カーロの世界 |
フリーダ・カーロはアメリカでの生活になじめなかった。夫のディエゴの仕事の都合でアメリカに滞在しているだけで、アメリカを気に入っているわけではなく、かえってその俗悪さにうんざりしていた。アメリカの金権主義が、社会主義的傾向を強くもっていたフリーダには我慢ならなかったのである。 「メキシコとUSAの国境に立つ自画像(Autorretrato en la frontera entre México y Estados Unidos)」と題されたこの絵は、そんなフリーダの気持ちを表現したものである。フリーダは、メキシコとアメリカの国境をまたいで立ち、あたかも二つの文明を比較しているように見える。メキシコを愛したフリーダだから、メキシコは暖かく、アメリカはグロテスクに描かれている。 フリーダは、左手でメキシコの国旗を、右手でたばこを持っている。タバコはアメリカの象徴なのだろう。そのアメリカは、工場の煙突から煙がもうもうと立ち込め、そのスモッグで星条旗がかすんで見える。一方メキシコは、マヤの遺跡が描かれ、その遺跡の上に雲に覆われた太陽と月がかかっている。その両方の雲が混ざることで、稲妻が発生する。手前には、メキシコの固有の植物が深く根を張っている。 (1932年 金属プレートに油彩 31×35㎝ プライベート・コレクション) |
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