壺齋散人の美術批評
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傷ついたテーブル フリーダ・カーロの世界




「傷ついたテーブル(La mesa herida)」と題されたこの絵は、ディエゴと離婚して別居していた時期に描かれた。1940年にメキシコ・シティで開かれた国際シュルレアリズム展に初めて展示されたあと、いくつかの美術館で展示され、1943年に、フリーダの意思によってソ連共産党に寄贈された。トロツキーと親しくしたことで、ソ連共産党とは疎遠になっていたフリーダが、和解のしるしとしてこの作品を贈ったのだった。だが、ソ連側では、シュルレアリズムへの理解がなく、たなざらしにされた。1955年にポーランドの展覧会に出展されたが、それを最後に行方がわからなくなった。いまでも捜査の対象となっている。そんなわけで、実物は見ることができない。だが、写真が残っている。上の画像は、その写真である。

ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を意識しながら描いたといわれる。大きなテーブルを囲んで、真ん中にフリーダ自身が座り、彼女のまわりには(左手から)二人の子供、メキシコ原住民、民俗人形、骸骨の標本、小鹿が並んでいる。小鹿はフリーダのペットだそうである。

テーブルの表面や床に血がこびりついているが、これはテーブルの傷から流れ出したものだ。テーブルの脚は人間の足の形をしており、生きているものとして扱われている。傷ついたテーブルはフリーダ自身なのであろう。フリーダの作品のなかでは、最も規模が大きく、ダイナミックな作品である。

(1940年 木に油彩 122×244㎝ 失踪中)



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