壺齋散人の 美術批評
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泣いている天使(es weint):クレーの天使




この絵の題名はドイツ語では es weint だから、「それは泣いています」となる。天使には性別がないので、中性形の es が使われているわけである。しかし、その中性の天使が、なぜ、どのような理由で、泣いているのだろうか。

人類の不幸のために、泣いているのだ、といえなくもない。なぜなら、クレーがこの絵を描いた1939年という年は、第二次世界大戦が勃発して、世界中の人間という人間が、互いに殺しあうようになった年だからだ。そのような光景を目の前にしては、天使ならずとも、泣きたくなろうというものだ。

あるいは、クレー自身の不幸を、かわって泣いてくれているのかもしれない。クレーは、この年、自分の生まれた国とはいうものの、スイスに亡命したまま、余命いくばくもない命を生きていた。そんなクレーのために、天使が泣いてくれているのかもしれない。





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