壺齋散人の 美術批評
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希望に満ちた天使(Engel voller hoffnung):クレーの天使




この絵の中の天使が「希望に満ちた天使(Engel voller hoffnung)」と呼ばれたのは、羽根を持ち上げて、顔も空の方を見上げているからだろうか。たしかに、忘れっぽい天使が、うつむいて、とぼけた表情を見せているのに比べれば、この天使の顔は、はればれとはいえないまでも、きりっとしているように見える。

はればれといえないわけは、そういえるほど翼に勢いが感じられないし、目も、いきいきとした溌剌さを感じさせないからだ。

ドイツ語の Engel voller hoffnung には、天使自体が希望に溢れているという意味とならんで、希望が天使の形をとったというような意味もある。とりあえず天使の形になってこの地上に現れたけれども、どんなふうにふるまったらよいかわからなくなって、つい、天上の方を見上げてしまう。天上には神様がいらして、天使になすべきことを教えてくれるかもしれないから、といった具合に。





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