壺齋散人の 美術批評 |
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アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像:クリムト |
1905年から09年にかけて、クリムトはベルギーの大実業家アドルフ・ストクレの屋敷の壁画制作に従事した。これはストクレの屋敷の建築設計から装飾までを一括して請け負ったジョーゼフ・ホフマンらウィーン公房のプロジェクトの一環として行われたものだった。このプロジェクトは装飾性を最大のコンセプトにしていたが、クリムトもそのコンセプトを取り入れて、非常に装飾性の高い図柄を制作した。 この時期のクリムトの絵には、そうした装飾性が強く現われている。その特徴は、金色を豊富に使い、装飾的なパターンを多用するというものだ。「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」と題するこの作品にも、その特徴が遺憾なく発揮されている。 クリムトの好きな正方形の画面には金色が氾濫し、女性の身体と背景とが区別できないほど融合しあっている。よくみると、女性は立っているようにも見えるし、椅子に腰掛けているようにも見える。その曖昧さは、女性と背景とが同じ金色をベースにし、似たような雰囲気の装飾パターンを施されているためだろう。そのパターンには、エジプト風の目玉とか、ミケネ風の渦巻き模様などが含まれている。 これは女性の上半身を拡大したもの。首に布を巻きつけ、両手を胸のところで組み合わせている。女性の背後に見える渦巻き模様はミケネ風の文様だ。 (1907年 カンヴァスに油彩 138×138cm ウィーン 国立オーストリア美術館) |
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