壺齋散人の 美術批評
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ユーディットⅡ:クリムトのエロス





クリムトは、1901年に続いて1909年にもユーディットをテーマにした絵を制作した。世紀末をまたいだ時代のヨーロッパでは、サロメとかユーディットがファム・ファタールの典型として人気を博していたので、この絵もそうした人気に便乗したものだと思われる。便乗するということばかりではなく、クリムト自身にもファム・ファタールへの強い嗜好があったようだ。

前作同様、金色の額縁の中にユーディットをはめ込むという手法をとっている。前作では、ユーディットは正面を向いて挑発的な表情をし、両手でホロフェルネスの首を抱えていたが、この絵では、斜め横を向いた姿勢で、上半身をはだけ、下半身は装飾的なパターンを配した衣を着けている。ホロフェルネスの首は、彼女の足元で、しずかに瞑想に耽っているようである。

この絵のポイントは、ユーディットの妖艶な雰囲気だろう。横を向いた顔は、きりりとひきしまり、意思の強さを感じさせる。両手には力が込められていると見え、指が異様な形に曲げられている。その指のある手先と、肩から腕にかけてのつながりが、わざと曖昧になっているようである。



これは、ユーディットの上半身を拡大したもの。身をよじっているが、肩付近のボディラインが曖昧なために、目眩ましされたような印象を受ける。胸から腹にかけての描き方も、わざと崩しているようだ。

(1909年 カンヴァスに油彩 178×46cm ヴェネツィア 近代美術館)




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