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アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅱ:クリムト |
アデーレ・ブロッホ=バウアーはクリムトの恋人で、彼女の絵をクリムトは何枚か描いている。もっとも有名なのは1907年の作品だが、それとこの絵を見比べると、同じ画家の手になるとは思えないほど、違った印象を受ける。その要素はいくつかあるが、決定的なものは、色彩の使い方だろう。1907年のものが「黄金様式」の典型例として、金色を主体にして装飾性に富んだ作品なのに対して、この絵は、どちらかというと大人しい印象を与える。 グリーン系を主体に、寒色が多く使われている。それが大人しい印象をもたらすのだろう。モデルは棒立ちして正面を向いているが、このポーズは晩年のクリムトの作品に多く現われる。 背景の赤が主体の部分には、馬や人物などが描かれており、またグリーンが主体の部分には花柄が描かれている。背景をこうした具象的なイメージで埋めるのは、晩年のクリムトの特徴である。 これは、モデルの顔の部分を拡大したもの。アデーレの顔は、1907年の作品でもボオッーとした表情を呈していたが、この絵ではそれがもっと強くなっている。こんなふうに描かれるのは、アデーレには不本意だったにちがいない。 (1912年 カンヴァスに油彩 190×120cm ウィーン 国立オーストリア美術館) |
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