壺齋散人の 美術批評 |
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乙女(Die Yungfrau):クリムトのエロス |
晩年のクリムトの絵には、無地に近い単調な背景に人物の群像を浮かび上がらせるタイプのものと、賑やかな装飾的パターンを背景にして単身の全身像を配置するタイプのものとが共存している。「乙女(Die Yungfrau)」と題されたこの絵は、前者の代表的なものである。 原題が Die Yungfrau とあるように、女性形単数の「乙女」あるいは「若い女」ということになっているが、描かれているのは複数の女性たちである。その複数の女性たちが、紫がかった濃いグレーをバックにして、もつれ合っている。女性たちの肌が白い分だけ、背景から浮かび上がる効果も大きい。 女性たちの数は六人とも、それ以上とも見える。その彼女たちが、それぞれに鮮やかな衣装を着て(中には裸体の女性もいるが)、もつれ合っているように見える。女性がもつれ合うのと呼応するように、衣装のパターンももつれ合っているようだ。 これらの女性たちは、クリムトの想像の産物らしい。彼女らを通してクリムトは何を表現しようとしたかったのか。 これは上部の四人の女性の表情を拡大したもの。明らかに性的エクスタシーに耽っていると感じさせるものもあれば、夢見心地でなにかを思いつめているような表情もある。 (1913年 カンヴァスに油彩 190×200cm プラハ国立美術館) |
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