壺齋散人の 美術批評
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エリザベート・バホーフェン=エヒトの肖像:クリムト





「エリザベート・バホーヘン=エヒトの肖像」と題するこの肖像画は、装飾的なパターンを背景にして、女性の全身像を描いたものだ。女性を十頭身以上の極端なプロポーションで描くのは、クリムトの一貫したポリシーだ。その女性が、シルクの肌触りを如実に感じさせる白いドレスに包まれて、こちら側を正面を向いて立っている。構図としては、クリムトにおなじみのものだ。

ユニークなのは、背後に配された装飾的なパターンと、ドレスと重なりあうように置かれている複雑なパターンだ。前者の方は、東洋人のイメージを採用しているが、後者は当時流行したジャポニズムやオリエンタル趣味の現われだろう。

女性の身体をよく観察すると、いささか調和を逸脱しているようにも見える。手が異常に長いのと、足が異様に小さいのとは、十頭身にさせる要請が、無理を強いた結果だと思われる。この女性は頭が小さいというよりは、胴体が異様に長いのだ。



これはモデルの上半身を拡大したもの。女性の表情は、目がきりりとして、知的な雰囲気を感じさせる。クリムトの絵にしては珍しいといえるが、それはモデルの持っている生得の資質の賜物なのかもしれない、なお、このモデルは男爵夫人である。

背景に描かれている人物のパターンは、モンゴル人を連想させる服装をしている。シナ趣味が多少誤解されて伝わったのかもしれない。

(1914年 カンヴァスに油彩 180×128cm 個人蔵)




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