壺齋散人の 美術批評 |
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花嫁(Die Braut):クリムトのエロス |
「花嫁(Die Braut)」と題したこの絵もクリムトの遺作の一つ。テーマは花嫁だが、アダムとイヴが聖書から伝わるイメージとかけ離れているように、この絵もまた花嫁のイメージとあまり結びつかない。花嫁のイメージを画面から読み取ろうとすれば、中央上部で顔を横に傾けた女性ということになろうが、それでも彼女から花嫁らしさが伝わってくるとはいえないようである。 花嫁がいるからには、花婿もいるのだろう。右側に配された人物のイメージがそれらしくも思えるが、まだ完成度が低いので、それらしい雰囲気は伝わってこない。 左側の群像は、何をイメージしているのか。これもよくわからない。子どもが描かれていることから花嫁の未来を暗示しているとも読めるし、あるいは花嫁を祝福する人々とも読める。それにしては、こちら側に尻を向けている女性は、何を暗示しているのだろうか。 中央の女性が顔を横に傾けているところは、「乙女」の中の主要な女性と同じである。これに限らず、この絵には「乙女」と似ているところが多い。(構図的にも色彩的にも) これはこちら側に尻を向けている女性を拡大したもの。このポーズは、「金魚」の中の女性のポーズとほとんど同じだが、一方が顔をこちら側に向けているのに対して、この絵の中の女性は、そっぽを向いている。 (1918年時点で未完成 カンヴァスに油彩 166×190cm 個人蔵) |
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