壺齋散人の 美術批評
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ヨハンナ・シュタウデの肖像:クリムト





これもクリムトの遺作の一つである。完成度はかなり高い。あと一筆といったところだ。この肖像画のモデルとなったヨハンナ・シュトラウスと思われる女性の未完成の別の肖像画が残されているが、それを見るとクリムトの肖像画制作のプロセスがわかる。クリムトはまず、顔の部分をほぼ完成させ、その後に衣服や背景に映ってゆくのである。

この絵では、顔の部分はほぼ完成し、衣服もだいたい完成形に近づいている。あとは背景だが、これはとりあえず赤基調の暖色で塗り込められている。これ以上筆を加えるとすれば、この背景だと思うのだが、クリムトがそれをどのように考えていたのかは、わからない。この状態のようなパターンなしの無地で収めるのか、それとも晩年の他の肖像画のような装飾的なパターンを配するのか。いまとなっては判らない。筆者としては、無地で収めるほうが、この絵には似合うのではかいかと思う。

ヨハンナ・シュタウデはウィーンの職業モデルで、この絵のモデルをつとめたのは34歳のときだった。ややぼっーとした印象に描かれているのは、クリムトの多くの肖像画に共通する特徴だ。



これはモデルの顔の部分を拡大したもの。目はうつろな様子で、前方を見るともなく見、口をややだらしなく開いている。

(1918年の時点で未完成 カンヴァスに油彩 70×50cm ウィーン 国立オーストリア美術館)




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