壺齋散人の美術批評 |
HOME | ブログ本館 | 東京を描く | 水彩画 | 日本の美術| プロフィール | 掲示板 |
アンドリューズ夫妻 ゲインズバラの風景画 |
「アンドリューズ夫妻(Mr and Mrs Andrews)」と題されたこの絵は、ゲインズバラの代表作たるのみならず、イギリス絵画を代表するものともいわれる。エリザベス二世の戴冠式を記念して選ばれた四つのマスターピースの一つに選ばれたほどである。そんなわけで、イギリス国内はもとより、世界中でゲインズバラ関係の展覧会が開催される際には、かならずリクエストされる。 もっともこの作品は、モデルつまりアンドルーズ家の家宝として長い間門外不出だったので、広く知られることはなかった。最初に公開されたのは1927年のことである。それをきっかけに、この作品はゲインズバラの最高傑作としての扱いを受けるようになった。 この絵は、最もゲインズバラらしい絵である。つまりゲインズバラが画家として打ち込んだ二つのジャンル、すなわち風景画と肖像画が密接に融合しているのである。風景の中の肖像画といってもよいし、肖像をアレンジした風景画といってもよい。肖像の描き方はかなりユニークであり、風景のほうもサフォーク地方らしい平坦さを強調している。 アンドリューズ家は、地主であるとともに金融業も営んでいた。イギリスの典型的な有産階級の一員だったわけである。だからこの絵は、イギリスの有産階級に媚びたものだというような批判を浴びることもあった。ゲインズバラとしては、イギリスの有産階級は自分の画家としてのビジネスのパトロンであって、かれらに媚びを売ることは、商売上の要請だったのである。 ともあれ、これ以前の彼の作品と比べ、一段と洗練された表現になっている。 (1750年 カンバスに油彩 69.8×119・4㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー) |
HOME | イギリスの風景画 | ゲインズバラ | 次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |