壺齋散人の美術批評
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ハーベスト・ワゴン ゲインズバラの風景画




ゲインズバラには「ハーベスト・ワゴン」と題する絵が二つある。一つは1767年に制作され、現在はバーミンガムのバーバー美術館が所蔵している。もう一つは1784年に制作され、現在はトロントのオンタリオ美術館が所蔵している。どちらも、ほぼ同じような構図である。この二つを見比べると、後者のほうが完成度が高い。色彩が明るくしかも多彩である。

ハーベスト・ワゴンとは取り入れた農作物を運ぶための車だろう。それにしてはこの絵の中の車には、収穫物ではなく、人間が乗り込んでいる。どこかへピクニックへ出かけようとでもいうのだろうか。この車に乗り込もうとする夫人を男が手助けし、また、少年が先導役を買って出ている。

絵の中の風景は、サマーセット州のバース周辺という。この地にゲインズバラは1759年から約15年間暮らした。1767年の作品はバース滞在中に制作されたことは間違いないが、1784年のものは、それをもとにアトリエで制作された可能性が高い。

(1784年 カンバスに油彩 121.9×149.9㎝ トロント、オンタリオ美術館)



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