壺齋散人の美術批評
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ナポリの建物 トーマス・ジョーンズの風景画




トーマス・ジョーンズは、1780年から1783年にかけてナポリに滞在した。かれはナポリの街が気に入り、その都市景観を多く描いた。建物をモチーフにした作品に傑作が多い。「ナポリの建物(Buildings in Naples)」と題されたこの絵は、かれのナポリ街景シリーズの代表作品である。

ナポリといえば、ドーム状の教会建築をはじめ、堂々とした建物が多くあるのだが、ジョーンズはそうしたものではなく、ごくありふれた建物のおりなす平凡な眺めを描いた。この絵は、前景に建物の古びた壁を描き、背景にナポリの市街地の遠景を描いている。

こうした日常的な景観を好んで描いた画家は、彼以前にはいなかった。かれがどうしてこうした景観に興味を抱いたか、よくはわからないが、絵画の歴史では珍しいことだというので、今日ではその現代的な意義が評価されている。

(1782年 紙に油彩 14.2×21.6㎝ ウェールズ国立博物館)



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