壺齋散人の美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板




のろしと青い光 ターナーの海景画




「のろしと青い光(Rockets and Blue Lights (Close at Hand) to Warn Steamboats of Shoal Water)」と題されたこの絵は、「奴隷船」とともに、1840年のローヤル・アカデミー展に出品された。ともに海景をモチーフにした作品である。両方とも海を背景にして、船のイメージを描いているが、モチーフは明確なラインで表現されておらず、色彩の変化によって表現されている。こうした傾向は、次第に強まり、ついには抽象画を思わせるような斬新な画風へと発展していくのである。

副題に「浅瀬の蒸気船に警告」とあるように、嵐の中で浅瀬に乗り上げた蒸気船に警告するために、海岸に集まった人々が、のろしを上げているシーンを描いたもの。すさまじい嵐の勢いは、逆巻く白波や空を覆う黒雲によって表現されている。その黒雲の間から、青い空がのぞき、その青い空の部分にのろしが見える。

画面左手には大勢の人々が集まり、船の様子をかたずをのんで見守っている。その船は、遠景に黒々と表示されるばかりで、明確なイメージにはなっていない。

(1840 カンバスに油彩 92.1×122.2㎝ マサチューセッツ、クラーク美術院)



HOMEイギリスの風景画 ターナー次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである