壺齋散人の美術批評 |
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吹雪 ターナーの海景画 |
ターナーは晩年、荒れた海と蒸気船をモチーフにした絵を多く描いた。「吹雪(Snow Storm)と題されたこの絵は、その代表作の一つ。副題に「港口から出た蒸気船(Steam-Boat off a Harbour's Mouth)」とあるように、吹雪の中を港口から出て、外洋で漂流する蒸気船を描いている。この蒸気船は、アリエル号という名の外輪船で、ドーヴァー・パケットに活躍していた。 ターナーは、荒れ狂う海のイメージを体感するために、船員に頼んでマストにくくりつけてもらい、そこに四時間も滞留して観察を続けたと自ら証言している。その信ぴょう性を疑う者は多いが、本人は真剣にそう主張した。 逆巻く海と躍動する雲に翻弄されるように、蒸気船が漂流している。その煙突からは黒々とした煙が立ち上っている。ターナーの油彩画は、晩年ますます抽象的になっていくが、これもそんな抽象性を感じさせる。 (1842年 カンバスに油彩 91×122㎝ ロンドン、テート・ギャラリー) |
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