壺齋散人の美術批評
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平和ー海上埋葬 ターナーの海景画




「平和ー海上埋葬(Peace - Burial at Sea)」と題されたこの絵は、スコットランドの画家デヴィッド・ウィルキーの死を哀悼した作品。ウィルキーはターナーと同時代人の画家で、ヨーロッパ大陸を遍歴し、各地の風俗を題材にした作品を手掛けた。最後の旅は、中東への旅で、エルサレムやアレクサンドリアなどを歴訪、その帰途ジブラルタル付近で死んだ。1841年のことである。ターナーはその死を悼んでこの絵を制作した。

ウィルキーの遺体は、イギリス側の船にわたされ、その船で海上埋葬された。この絵は、その海上埋葬の様子を、ターナーが自分の想像力を駆使して描いたものだ。船が二隻いるのは、イギリス側の船と、それにウィルキーの遺体を引き渡した船であろう。

この作品は、「戦争」と題した作品と対をなしている。その二つを並べることで、戦争と平和の意義について考えてもらいたいと意図したのだろう。戦争のほうは暖色主体のけばけばしい印象を与えるのに対して、平和をモチーフとしたこの絵は、モノトーンに近い静寂な印象を与える。

(1842年 カンバスに油彩 87×86.7㎝ ロンドン、テート・ギャラリー)



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