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ノラム城、日の出 ターナーの風景画




「ノラム城、日の出(Norham Castle, Sunrise)」と題されたこの絵は、ターナー最晩年の代表作。「雨、蒸気、スピード」に見られた抽象性が、この作品では一層高まっている。輪郭はぼかされ、モチーフの城は朝日をあびて、混とんとしたイメージで表現されている。

ノラム城は、スコットランドとの国境を流れるツィード川に建設されたもので、スコットランドからイングランドを防衛するための前線の拠点というべき砦。ターナーはこの城に大きな興味をもったらしく、1897年に訪れてスケッチしている。1801年にも再訪し、その折のスケッチをもとに、白黒の版画や水彩画などを制作している。

この絵の構図とほぼ同じ構図の作品が1816年に白黒版画として作られている。ターナーはそれをもとにこの絵を描いたと思われる。だが原画がかなり具象的なのに対して、こちらは随分と抽象的である。

画面中央に見えるのが城郭の塔の部分。川は、そこに突き当たって右側へ流れを変える。その右側の方角にも、城塞の一部が伸びているようにみえる。

(1845年 カンバスに油彩 90.8×121.9㎝ ロンドン、テート・ギャラリー)



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