壺齋散人の 美術批評 |
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ムーラン・ルージュ:ロートレックのポスター |
ロートレックが初めてポスターを制作したのは1891年の夏、26歳の時であった。その二年前の1889年に、シャルル・ジドレがモンマルトルにキャバレー、ムーラン・ルージュ(赤い風車)を開業していたが、その宣伝のためのポスターをロートレックに注文したのだった。この注文をロートレックが真摯に受け止めたことは、制作への意気込みを語った母親あての手紙の中で示されている。その中で彼は、自分がこの新しい芸術の旗手になることへの矜持を吐露している。 画面中央に当時の花形ダンサー、ルイーズ・ウェベール(愛称"食いしんぼ La Goulue")の踊っている姿を配し、手前に"骨なし男"ことジャック・ルノーダンを配している。踊り子の背後には観客のシルエットが黒く描かれているが、その中にはロートレックの従兄ガブリエル・タピエや人気ダンサー、ジャンヌ・アヴリールが含まれているとされる。 上段の文字はロートレック自身によるデザインだが、下段のほうは後に誰かによって付け加えられた。その者の名は不明である。 顔料は、黄、赤、青、黒の四色だ。それらの色を混ぜ合わせたりグラデーションをつけたりして色彩を表現している。初版では、この色彩のコンビネーションがうまくゆかず、ロートレックにとっては不満だったようだ。後に印刷会社を変えて、思うような色彩を実現した。 このポスターがフィーチャーしたムーラン・ルージュは一躍パリ名物となり、多くの映画の舞台ともなった。いまなお営業している。 (1891年 リトグラフ 170×120㎝) |
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