壺齋散人の 美術批評 |
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ミルリトンのブリュアン:ロートレックのポスター |
ロートレックは、アリスティード・ブリュアンのために四点のポスターを制作したが、これはその最後のもの。ミルリトンとは、ブリュアンの出していたイラスト入り雑誌及びその名を冠したキャバレー。もっともミルリトンの文字は初刷りにはなく、二刷りから加えられた。 ブリュアンは後ろ姿を見せている。人物の後ろ姿をロートレックは好んで描いたが、宣伝が目的のポスターで、顔を省くのは異例のことだ。顔がなくとも、服装や身振りから、この男がブリュアンであることは、当時のパリジャンにはよく知られていたことだった。つまりブリュアンは顔のない姿でも、人々にそれと見分けられたということだ。 このポスターの予告記事を、当時の風刺雑誌「エスカルムッシュ」が載せた。ロートレックはいまこのポスターに最後の仕上げをしているところなので、今しばらくお待ち願いたい、という趣旨の言葉だったそうだ。それほどロートレックのポスターは人々の期待を集めていたということなのだろう。 顔料は最終刷りでは、黒と赤の二色だ。初刷りでは、黒の代わりにオリーブグリーンが用いられていた。他のポスターと異なり、ブリュアンは赤いマフラーをしていない。どんな意味があるのか。 (1893年 リトグラフ 77×59㎝) |
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