壺齋散人の 美術批評 |
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シンプソンのチェーン:ロートレックのポスター |
![]() ロートレックは自転車が大好きだった。自分自身は身体的なハンディキャップのために乗り回すことができなかったが、自転車競技場に頻繁に足を運び、自転車を見物するのを趣味としていた。その自転車は、1888年に現在のような空気タイヤが開発されたことで新たな段階に入り、1890代には空前の自転車ブームがヨーロッパ諸国に沸き起こった。 そういう時代背景のもとで、ロートレックは自転車をテーマにしたポスターをいくつか制作している。これはその一枚で、自転車製造企業シンプソンの依頼を受けたものである。そのシンプソンは、背景の中央部に、コートのポケットに手を突っ込んだ姿で描かれている。 タイヤやスポークなどはざっくりと描かれているが、チェーンはかなり綿密に描かれている。シンプソン社は自転車の総合メーカーだったが、とくにチェーンの製造に自信をもっていたようである。そのチェーンのギザギザは丁寧に描かれているが、ペダルの部分は曖昧だ。ロートレックはペダルを描くのが苦手だったようだ。ほかのポスターでも、ペダルはいい加減に描かれている。 三人のレーサーのうち最後尾のものは当時の人気レーサー、コンスタン・ユレと言われる。顔料は、黄色、赤、青の三色を用い、ロートレックのポスターとしては珍しく、込み入った印象を与える。 (リトグラフ 1896年 88×124㎝) |
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