壺齋散人の 美術批評 |
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ラ・ジターヌ:ロートレックのポスター |
ロートレックの最後のポスター作品は1900年の「ラ・ジターヌ」である。これは、アルフレッド・ナタンソンから依頼された仕事で、ジャン・リシュパンの戯曲「ラ・ジターヌ(ジプシー女)」の舞台化を宣伝することを目的としていた。その舞台では、ナタンソンの妻マルト・メロが運命の女を演じることになっていた。 図柄は、両手を腰に当てて、自分を捨てて去る男に嘲笑を浴びせるジプシー女を強調している。このジプシー女を、マルトが演じたわけだ。その表情を見る限り、あまり魅力のある女性とも思えない。 そういうわけもあるのだろうか、テアトル・アントアヌの初日の舞台に招かれたロートレックは、舞台をそっちのけにして、バーで飲み続けて泥酔してしまった。このころのロートレックは深刻なアルコール中毒に陥っていたのである。ロートレックはこの中毒のために翌年三十台なかばの若さで死んでしまう。 この舞台は不評だったようで、数日興行しただけで終演となってしまった。そのためこのポスターがパリの街を飾ることはなかったのである。 顔料は、黒、グレー、ブルー、赤、ブラウンの五色を用い、全体に暗いイメージになっている。これでは街に貼られてもあまり人の目を引くことはできなかったのではないか。 (1900年 リトグラフ 91×64㎝) |
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