壺齋散人の 美術批評
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ボートのアトリエで描くモネ:マネ





マネはモネ、ドガ、ルノアールといった印象派の画家たちと仲良くなったが、一番親しみを覚えたのはモネだった。モネが1865年のサロンに出展した海洋画が批評家たちの喝さいを浴びた時には、名前の似ているこの若い画家にいら立ちを覚えたこともあったが、じきに親密な間柄になった。モネのほうではマネを自分たち印象派の指導者のように思っていた。一方マネは自分を印象派とは区別し、あくまでもオーソドックスな絵画をめざすのだと思っていた。

彼ら二人はたびたび屋外で一緒に作業した。この「ボートをアトリエで描くモネ」という作品は、その成果と言えるものだ。モネはアトリエとして使っていた船を持っていて、それをセーヌ川に浮かべては水辺の風景を描いた。この絵は、そんなモネの作業光景をモチーフにしたものだ。

アトリエ船に乗っているのは、モネと彼の妻カミーユだ。この二人の姿をマネは、セーヌ河畔のアルジャントゥイユの岸辺から描いた。モネの家はこのアルジャントゥイユにあったし、マネのほうもアルジャントゥイユの対岸に別荘を持っていた。そんなわけで彼ら二人はたびたび連れ立ってアルジャントゥイユのあたりで、屋外での作業を楽しんでいたのである。

この絵は屋外で描かれたということもあり、全体的に明るい印象を醸し出している。しかし、モネら印象派の画家とは違って、マネは光の効果にはあまり注意を払っていない。そのため画面がかなり平板になっている。

(1874年 カンバスに油彩 80×98㎝ ミュンヘン、ノイエ・ピナコテーク)





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