壺齋散人の 美術批評
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プラム:マネ





晩年のマネは有名人となり、彼のまわりにはさまざまな人間たちが集まって来た。そうした人間たちの中でマネが興味を抱いたのは可愛い女性たちだった。マネはそうした女性たちの中から気軽にポーズをとってくれる女性を選んで、肖像画らしいスナップ風の絵を描いた。「プラム」と題するこの絵は、そのすぐれた一点である。

題名にあるとおり、プラムをよそったワイングラスを前に、女性が瞑想にふけっている。彼女は脱力して重くなった頭を支えようとして、右手を自分の頬に沿えている。その左手にはシガレットが軽く握られている。このポーズで一体何を考えているのだろうか。恋人との逢引きの思い出に耽っているのだろうか。思わずそんなふうに人を考えさせてしまう。

モデルは女優のエレン・アンドレ。彼女は画家たちの要請に応じて気軽にポーズをとったという。ドガも彼女をモデルにして、「アブサン」と題する絵を描いている。「アブサン」のなかの女はアルコール中毒を感じさせるが、この絵の中の女は健康そうなイメージである。

室内にかかわらず、女には光が体中にあたって、輝いているような雰囲気がある。その分画面は明るく、のびやかな印象を与える。随所に使われているホワイトが非常に効果的である。

(1878年 カンバスに油彩 73.6×50.2㎝ ワシントン、ナショナル・ギャラリー)




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