壺齋散人の 美術批評
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メリー・ローラン:マネ




最晩年のマネは、病気のために油彩の大作を描くことができなくなり、パステルで人物画を描くようになった。その頃の彼が好んで描いたのは、親しい女性たちだった。マネは病気の為に肉体的に苦しいだけでなく、精神状態もよくなかったのだが、親しい女性が近くにいると、生きがえったような感じがするのだった。

最晩年のマネが描いた女性としては、メリー・ローランやその友人のイルマ・ブルンナー、ギュメ夫人、エミリー・アンブル、イザベル・ルモニエなどがいた。最も気に入っていたのはメリー・ローランだった。マネは彼女の肖像を何枚も描いている。

この肖像画はそのうちのもっともすぐれた一点だ。メリーの横顔が、パステルの独特なタッチを活用して、いささか幻想的なムードに描かれている。パステル画としては、おそらく最も優れたものではないか。



これは彼女の横顔の部分を拡大したもの。目や唇の描き方に、パステルの特徴がよく生かされている。

メリー・ローランは、上流階級の男たちの愛人で、愛すべき性格から大勢の男たちをいつも自分のまわりに引きつけていた。マネも、彼女の頭のよさや物腰の柔らかさに魅かれていた一人だった。

(1882年 カンバスに油彩 54×44㎝ ディジョン美術館)




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