壺齋散人の 美術批評
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ルーマニア風のブラウス(La blouse roumaine):マティス、色彩の魔術





「ルーマニア風のブラウス(La blouse roumaine)」と題したこの絵は、非常にシンプルに見えるが、シンプルなだけにいっそう、構図の決定にはかなりな時間を要した。マティスがこの絵を完成させるにあたって描いた習作が十三枚も写真に残されていることからも、そのことがわかる。

習作には、肘掛け椅子に座った女性、背景に装飾的な模様を施したもの、女性のブラウスの肩が普通のありきたりの形をしているものなど、いろいろなヴァージョンがある。マティスはそれらのヴァージョンを潜り抜けることで、この絵の構図に最終的に落ち着いたのだった。

背景を赤一色に染め、そこから一人の女性が浮かび上がるという非常にシンプルな構図である。女性が着ている白いブラウスは、肩の部分が盛り上がっているが、これはルーマニアの民族衣装に特徴的な形なのだそうだ。

モデルになったウィルマ・ジャヴォールはハンガリア娘だが、この絵の中の女の顔は、特定の国籍を感じさせない。コスモポリタンな感じの女性が、ナショナルさを感じさせる衣装を着ているわけである。

娘が前面で組み合わせた両手が、グジャグジャとなっているが、これはマティスのテクニックの現れであって、アンリ・ルソーのように人体の細部を描くことが苦手だったわけではない。

(1940年 キャンバスの油彩 92×73cm パリ、現代美術館)





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