壺齋散人の 美術批評
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地獄へ落とされた人々:ミケランジェロ「最後の審判」




システィナ礼拝堂壁画「最後の審判」の最下列右側は地獄に落とされた人々を描いている。これら呪われた人々は、渡し守カロンによって船で三途の川を渡され、地獄の入口でミノスに引き渡される。するとミノスは、人々の罪状に応じて、地獄のなかの各部分に割り当てるのだ。そのミノスの有様をダンテの「神曲」は次のように記述している。

「ここに冥官ミノス、憤怒のすがた恐ろしく、牙をむいて立ち、入り来る者の罪状を調べ、裁定し、身のこなしによって然るべき処へ送る」(寿岳文章訳)

ミケランジェロのこの絵は、地獄の入口に着いた船から、人々がカロンによって追い立てられる場面を描いている。カロンは暗緑色の肌で、するどくとがった耳を持ち、指先には鷲のような爪を持った姿で描かれている。伝説の中には、カロンの頭には蛇が巻き付いているとするものもある。



これは、ミノスの部分を拡大したもの。ミノスの体には大きな蛇が巻き付いているほか、ペニスの部分に緑色の蛇が食いついている。ミノスと蛇との間にどのようないわれがあるのか、よくはわからない。カロンとミノスとを混同したのかもしれない。

なお、このミノスの顔は、儀典長のビアージョの顔と言われる。ビアージョはミケランジェロの仕事にけちをつけたことがあり、それに立腹したミケランジェロが、絵の中で報復したということらしい。





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